企業を経営するためには、資金が必要です。
例えば、何かを販売するためには、まず、販売するものを仕入れなければなりません。
そのためには資金が必要となります。
また、従業員を雇うのであれば、従業員に支払う賃金のための資金も必要です。
それらの資金を調達するためにはどのような方法があるのでしょうか?
今回は、企業における資金調達や資金調達方法、また、それぞれの方法のメリット、デメリットについて詳細に説明したいと思います。
資金調達とは
資金調達とは、企業がその事業を遂行するために、必要な資金を外部から何らかの方法で手当てすることを言います。
すなわち、企業が会社を経営するために必要になるお金をどこかから手当てしてくることです。
その資金調達の方法には、さまざまな方法があります。
簡単な言葉で表現すれば、自分の資金を拠出するという方法もありますし、どこかから融資を受けるという方法もあります。
資金繰りが苦しくなれば、持っている財産を売却して資金をねん出するということもあるでしょう。
このように、いろいろな方法を使って、企業の経営のために必要な資金を手当てすることを資金調達と言います。
資金調達方法の種類
資金調達の方法には、さまざまな方法の種類があります。
資金調達というのは、前述のとおり、企業がその事業を行うために必要な資金を何らかの方法で手当てすることです。
そのための方法の種類としては、大きく分類して、3つの種類があります。
1つ目の方法の種類は、負債での資金調達です。
これは、いわゆる借金をする、融資を受けるということになります。
借金をする、融資を受ける相手もさまざまで、銀行であったり、ノンバンクであったり、政府系金融機関などが考えられます。
また、どこかの金融機関から融資を受けるのではなく、社債を発行して広くさまざまな人や企業から資金を調達する方法もあります。
これらの負債での資金調達方法を英語では「デットファイナンス」と呼びます。
2つ目の方法の種類が株式で資金調達をする方法です。
企業が株式会社である場合、その企業の株式を新たに発行して、それを投資家や社員などに買ってもらい、資金を調達する方法がこれにあたります。
この資金調達方法は、融資負債での資金調達と違って、資本を増やす行為になります。
また、自己資金を拠出するのも、この株式を発行する行為と似た行為になります。
これらの資金調達方法は、資本を増やす資金調達方法であることから、英語では「エクイティファイナンス」と呼ばれます。
3つ目の方法の種類は資産を流動化する方法です。
この方法は「アセットファイナンス」と呼ばれます。
例えば、企業が持っている価値のある資産を売却することによって、現金化するのが資産を流動化する方法にあたります。
具体的には、企業が持っている土地やビルを売却してその売却代金を得るというようなことです。
資産を売却するまでしなくても、証券化をして数多くの投資家に購入してもらうという方法もあります。
また、企業が取引先に有している売掛金をファクタリング専門業者に引き取ってもらう、いわゆるファクタリングも資産の流動化にあたります。
さらに、ここまで挙げた3つの方法以外にも、資金調達の方法の種類は考えられます。
例えば、政府や地方公共団体から助成金や補助金を得るとか、寄付を受ける、クラウドファンディングで資金を募るなども有効な資金調達方法の種類と言えます。
費用を減らすことによって、結果的に資金調達をしたのと同じ効果を得る方法も有効です。
外注に出していた作業を自社の従業員で行う、人件費、経費の削減を行う、保険を解約するなど、支出を見直すことによって、結果的に有効に使える資金を確保し、資金調達をしたのと同じ状況にすることができます。
また、資産や投資を行うにあたって、リースや割賦をすることによって、一時的なキャッシュフローの負担を平準化することによって、結果として資金調達をしたのと同じような効果を得るという方法も考えられます。
では、ここからは、それぞれの資金調達の方法の種類とメリット、デメリットについて、詳しく見ていきたいと思います。
負債での資金調達
負債での資金調達というのは、貸借対照表における負債の部分を増やすことによって、資金を増やす方法です。
負債での資金調達という方法のうち、もっとも典型的な方法が、借入金をする、すなわち融資を受ける方法をとることです。
借入金は貸借対照表の負債にあたり、これを増やすことによって、資金調達をして現金を増やすというのが融資による資金調達です。
その他にも、社債を発行するという方法でも負債での資金調達が可能になります。
融資を受ける
融資で現金を増やすことで、企業は必要な運転資金を確保し、結果、企業は必要な資金調達の遂行を完了したことになります。
具体的に借入金をする、すなわち融資を受ける相手先は、銀行やノンバンク、政府系金融機関などが考えられます。
これらの融資を受ける金額や利率は、融資を受ける相手先が銀行なのかノンバングなのか、政府系金融機関なのか、その他の借入先なのか、すなわち融資の相手の違い、及び、融資の借入期間や企業の信用、企業の財政状況、担保や保証人の有無などによって変わってきます。
借入金、すなわち融資での資金調達をするメリットは、調達できる金額や借入期間、利率などを比較的自由に決めることができるということが挙げられます。
また、融資を受ける相手先などの選択肢が広いということもメリットとして挙げられます。
同じ借入金、すなわち融資を受けるにしても、どの金融機関からの融資を受けるかを選ぶことができます。
融資を受ける方法の種類も多彩です。
基本的には、どのようなものを、融資を受けるための保証として金融機関に提供するかによって、その種類が違ってきます。
主な融資を受ける種類として、信用保証協会に保証をしてもらうことで融資を受ける「信用保証協会保証付き融資」や、企業が有している不動産を担保にする「不動産担保融資」、同様に企業が有している不動産の登記に抵当権を設定する「抵当権付き融資」、企業が他の企業に対して持っている売掛金を担保に入れる「売掛金担保融資」などがあります。
また、ビジネス・ローンや消費者金融のように担保を必要としない「無担保融資」も存在をします。
このように選択肢が多いということが、負債での資金調達という方法で資金調達をすることのメリットと言えます。
さらに、利息の支払いは税務上の損金として扱われますので、税金の支払いを抑えるという効果も見込むことができます。
一方で、資金調達をした金額を返済しないといけないということは、借入金、すなわち融資で資金調達をするデメリットと言えます。
資本金で資金調達をしたり、資産を流動化したりして、資金調達をする場合は、返済が必要ではありません。
それと比較すると、いずれ調達した金額の返済をしないといけないということは、借入金すなわち融資による資金調達のデメリットと言えます。
次に、借り入れた額の他に利息も支払わないといけないということは、借入金、すなわち融資で資金調達をする方法の取るデメリットと考えられます。
株式の発行やその他の方法でも、資金調達をした資金に対して利息を支払わなくて調達できる方法に比べると、確実に調達した資金の額以上の金額を返済しないといけないのはデメリットになります。
また、借入金、すなわち融資を受けるためには、一般的に、担保や保証人が必要になります。
これも、一つのデメリットとして挙げられるでしょう。
さらに、借入金、すなわち融資を受ける額や社債の発行額が多くなると、企業の自己資本率が下がることになります。
このことによって、企業は、借入金、すなわち融資を受けることや社債などに依存した経営をしているように判断され、企業の信用が下がる可能性があります。
企業の自己資本率が低くなると、倒産のリスクがあると判断され、その後、融資を受けるときの利率や社債発行の際の利率が高くなってしまうことにつながってしまいます。
これが、悪循環のスパイラルに陥って、結果的にどんどん資金繰りが悪くなってしまうという恐れがあります。
社債を発行する
もう一つの負債での資金調達方法が、社債を発行する方法です。
企業の発行する債券を社債と呼び、社債は企業が発行する有価証券です。
主に投資家がこれらの社債を購入します。
企業が社債を発行する場合には、一定の利率を付加して、満期が来た場合はその社債の所有者に負債を償還します。
これを条件に企業が発行する社債を購入する投資家などを募集し、必要な資金調達を行います。
社債を発行する際の利率も借入金、すなわち融資を受ける際の利率と同じように、社債の期間や発行する企業の信用度、借入金などの利率や他の企業が発行している社債の利率や金利など、発行時の金融環境によって決まります。
社債を発行することのメリットは、銀行などから融資を受けるのと同様、調達できる金額や借入期間や利率などを比較的自由に設定できることです。
また、利息部分が税務上の損金に算入できることも借入金、すなわち銀行などからの融資と同様です。
さらに、借入金、すなわち銀行からの融資と比較した場合のメリットとしては、担保や保証人が必要ないということが挙げられます。
一方で、デメリットについても、調達した額を期日に返金しないといけないということ、利息を加えて償還しないといけないことや、債券を発行することで企業の自己資本率が下がってしまうというのは、借入金、すなわち銀行などからの融資と同様です。
社債を発行することの、融資と比較してのデメリットとしては、一括して借入して一括して償還することになるので、融資を受ける場合のように、毎月一定額の利息及び元本を返済するというような方法がとれないということが挙げられます。
株式での資金調達
次に、企業のメジャーな資金調達方法として考えられるのが、株式で資金調達をする方法です。
株式で調達された資金の額は、資本金として扱われます。
企業は、この資本金によって現金を入手するということになります。
株式で資金調達するためには、企業はどのような株式をどれだけ発行するかを決める必要があります。
すなわち、資金を調達するために株式を発行する場合には、その発行する株式を、「普通株式」にするか、「種類株式」にするかなどを決める必要があるということです。
「普通株式」は配当や議決権など、1つの株式に与えられる権利が原則として平等です。
一方で企業は「普通株式」とは別に「権利の内容が異なる」株式を発行することができます。
この株式を「種類株式」と言います。
「種類株式」はその議決権や配当などについて、いろいろな設定をすることができます。
「普通株式」であれば、取得した株主には株式持分に応じた議決権が生じます。
少数株主に対しても、株主提案権、取締役・監査役の解任を求める権利、帳簿閲覧権など一定の権利がありますし、株式の持分割合が多くなるにつれて、株主総会の特別決議を単独で否決する権限、株主総会の普通決議を単独で可決する権限、株主総会の特別決議を単独で可決する権限などの権利を得ることになります。
一方で、「種類株式」のうち、例えば、配当金を多く配分する代わりに議決権は生じないという「配当優先株式」を発行した場合、「配当優先株式」を有する株主に配当される金額の割合は多くなるものの、会社の経営を決める議決権は生じないなどの株式設計をすることもできます。
ただ、一般的に「普通株式」の方が「配当優先株式」を発行するよりも、株主を見つけやすいなど、株式の種類によって、資金調達のしやすさの違いがあります。
一方で、配当目的で株式を取得したいような投資家に対しては、議決権などが制限されている代わりに配当金の配分を高く設定されたような「種類株式」を発行することも考えられます。
このような会社側の意図と株主側の意図に沿った株式を発行することでお互いの目的に合った株式を発行して、資金調達をすることも可能です。
株式を発行のメリットとして挙げられるのは、まず、株式の発行によって得られた資金は、企業が自由に使えるということです。
株式で資金調達をした場合には、借入金、すなわち融資を受けた場合や社債を発行した場合のように、返済する必要がありません。
また、借入金、すなわち融資を受ける場合のように、担保や保証人も必要ありません。
さらに、株式の発行によって得た資金は資本金となるので、企業の自己資本率が上がることになります。
企業の自己資本率が高いということは、一般的に経営基盤が安定していると判断されるので、その後、借入金、すなわち融資、株式を発行する際の株式の引き受け、通常の会社の取引などにも有利に働くことが考えられます。
一方で、普通株式を発行した場合には、株式を引き受けた株主に議決権を持たれることになりますので、取得した株式数によっては、企業経営に一定の発言権を持たれることになります。
すなわち、企業の経営に対して、一定の発言権を持って口出しを受けるということになります。
前述のとおり、その株式の割合が高くなると、その分、発言権は強くなっていくことになるので、注意が必要です。
さらに、発行した株式を買い集められた場合、買収や合併を決められてしまうリスクも伴います。
株式の発行をする場合は、このようなリスクも考慮したうえで、株式発行後の自社の株式の全体設計を考える必要があります。
資産を流動化する
企業が資金調達を可能にするような価値のある資産を有している場合には、これらを流動化、すなわち現金化することや、企業が所有する不動産や工場などの資産や住宅ローン、アパートローン、ショッピングローンなどの債権を証券化して、小口販売するなどの手法をとることで必要な運用資金を確保することができます。
主に3つの方法が考えられますので、これらについて、見ていきたいと思います。
資産価値のあるものの売却
資産価値のあるものの売却というのは、例えば、余剰の在庫を売却するとか、使っていない不動産や機械などを売却する、というようなことで、資産を現金に換えて経営に必要となる資金を手当てするということです。
メリットとしては、企業自身のみの判断で行うことができるということが挙げられます。
融資を受ける場合や株式を発行する場合のように、金融機関の審査を受けたり、株式の引受人を探したりするようなことは、必要はありません。
一方で、資産を売却することになるので、売却された資産から生み出される可能性のあるキャッシュフローは、売却後は当然得られなくなります。
例えば、企業で所有していた土地を売却した場合、それを賃貸することによって得られる収入は得られなくなります。
また、結果として、資産が現金に換わって資金繰りとして企業から拠出されることになりますので、会社の経営規模としては小さくなっていくことも間違いありませんが、このことは、一方で資産のスリム化という観点から見ると、ROAなどの財務指標が改善するというメリットにも考えられます。
企業が有する資産やローン債権などを証券化する
次に、企業が所有する不動産や工場などの資産、同様に企業が所有する住宅ローン、アパートローン、ショッピングローン債権などを証券化して小口販売などして資金調達の方法を取るということも考えられます。
この方法のメリットとしては、本来であれば、相当規模の金額を持っている買い手を見つけないと売却できない不動産などの資産や企業が所有している住宅ローンなどについて、いろいろな投資家に対して小口に証券化して販売することによって、広く薄く資金調達をすることができます。
また、資産として財務諸表上、重い負担になってしまっている不動産や工場、設備などをオフバランス(貸借対照表に載せなくて済む)できるということもメリットです。
また、証券化して販売することによって、当該不動産などの資産が値下がりしたり、災害で被害を受けてしまったりした際の損失を回避できるというメリットも考えられます。
一方で、資産の証券化には金融機関や信託銀行、証券会社など多数の機関が介在してくることが通常なので、手続きに手間がかかることと、それぞれに対する手数料が発生してくることなどがデメリットとして挙げられます。
同様に、企業が所有している商品や在庫品などの動産を証券化することによって、資金調達をするという方法を取ることも可能です。
メリットとしては、企業は所有している商品や在庫品などの所有権を証券化することによって、貸借対照表からオフバランス(貸借貸借表に載せなくて済む)することができるということが挙げられるのも、不動産資産などと同様です。
一方で、手間がかかることや手数料が発生するデメリットについても、不動産などと同様であるとともに、動産の証券化は、不動産の証券化ほど、一般的に浸透していないということもデメリットとして挙げられます。
その他にも、企業が有する知的財産権を証券化するという方法も考えられます。
資産や財産の証券化と似たような方法として、ファクタリングで資金を調達するという方法も考えられます。
ファクタリングというのは、企業が他の企業に対して有している売掛金の債権を、ファクタリングサービス専門業者などに売却することによって現金化することを言います。
ファクタリングをすることのメリットは、まず、基本的に、企業自身のみの判断で行うことができるということです。
主なファクタリングには、ファクタリングをしようとする企業とファクタリングサービス専門業者の2社で決める2社間ファクタリングと、ファクタリングしようとする企業が売掛金債権を持っている取引先も含めた3社で決める3社間ファクタリングがあります。
特に2社間ファクタリングでは、基本的に、売掛金債権を持っている取引先への通知と承諾は必要ありません。
よって、資金調達をしようとする企業自身の判断で資金調達が可能です。
ファクタリングのその他のメリットとしては、融資を受ける場合に必要な企業に対する審査などが必要なく、また、企業の負債が増えないということが主なものになります。
一方で、本来全額受け取れるはずであった取引先に対する売掛金が、手数料を支払うことによって目減りしてしまうことや、取引先や関係企業などにファクタリングをしていることが判明した場合、ファクタリングをしなければならないほど資金繰りが苦しくなっているというという風に見られてしまう可能性があるというデメリットが考えられます。
その他の方法
その他の資金調達方法としては、政府や地方公共団体等からの助成金や補助金を受け取る、などの方法が考えられます。
まず、政府や地方公共団体からの助成金や補助金ですが、これらについては、政策的観点などから、一定の条件のもとに、政府や地方公共団体に申請して承認された場合に給付されるものです。
よって、どのような時期に、どのようなことに対して、どの程度の助成金や補助金が出るのかということが、その時々に応じて変わっていきます。
助成金や補助金のメリットとしては、返済する必要がないということが挙げられます。
一方でデメリットとしては、申請に手間がかかること、申請してから給付までに一定の時間がかかること、さらに助成金や補助金の目的に合わず申請しても承認されない可能性があることなどが挙げられます。
また、直接的な資金調達方法ではないですが、資産や設備を調達する場合に、一括して購入するのではなく、リースや割賦で購入するというのも、一種の資金調達と同様の効果を得ることができます。
メリットとしては、本来、高額の資産や設備を購入する際には、多額の資金を用意する必要がありますが、リースや割賦をすることで、均等に分割して資金を融通すれば済むので、コスト管理がしやすくなります。
一方で、途中解約ができないことや、リースの場合には、基本的には、資産を購入した場合の金額以上の合計金額を支払うにも関わらず、自己資産にならないというデメリットもあります。
事業別のおすすめ資金調達方法
資金調達方法は、それぞれの企業の事業や企業の経営状況に合わせて、適切に選択していくことが非常に重要になります。
ここでは、企業の事業別にどのような資金調達方法を選択するのが良いのかについて解説しようと思います。
スタート・アップ、ベンチャー企業
スタート・アップやベンチャー企業の特徴としては、勢いがあるものの、まだまだ企業としての実績が乏しく、社会的な信用性も高くはないということが挙げられると思います。
このような状況から考えた場合、銀行などからの融資を受けたり、社債を発行したりするというのは、企業としての信用や企業の財務状況の審査を伴うため、なかなか厳しいということが多いと考えられます。
よって、スタート・アップやベンチャー企業の資金調達方法としては、日本政策金融公庫や信用金庫、信用組合からの融資を受ける、担保や保証人を必要としないビジネス・ローンやノンバンクからの融資を受ける、自己資金を投入する、ハイリスクでもハイリターンを望むベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資を受けるなどの資金調達方法から選択するのが現実的になります。
日本政策金融公庫や信用金庫、信用組合からの融資は、利率がビジネス・ローンやノンバンクよりも低いというメリットがある反面、融資をうけるためには、事業計画や返済計画を厳しく審査されるため、非常に手間を要します。
すぐに融資を受けられるわけではないということもデメリットになります。
一方で、ビジネス・ローンやノンバンクからの融資を受けた場合は、比較的早期に資金調達できる代わりに、利息が高めに設定されることになります。
融資を受けられる額も限られたものになるということもデメリットです。
次に、資本金を得る資金調達方法では、まず自己資金を投入するという資金調達方法が考えられます。
自己資金を投入する場合には、当然審査や申請などは必要ありませんが、事業がうまく行かなかった場合には投入した資金が消滅してしまう可能性があるというリスクを伴います。
また、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資を受けるというのは、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家にとって魅力的な事業である場合、スタート・アップやベンチャー企業にとっては、資金調達がやりやすい可能性があります。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資を受ける場合、事業を行うにあたって、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から経営支援を受けられるというメリットがある反面、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の意向に沿った経営を受け入れないといけないという表裏一体のデメリットもあります。
さらに、そもそもベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は、スタート・アップやベンチャー企業が上場することや事業売却によって得られる売却益を得ることを目的として出資をするので、半ば強制的に上場や事業の売却を目指させられるということになってしまうということもデメリットと考えられます。
その他の資金調達方法としては、助成金、補助金を受ける、クラウドファンディングで資金を集めるなどの方法も考えられます。
助成金や補助金を受ける場合には、助成金や補助金の目的に合った場合にのみ、これらの給付が得られるものの、事業を始めるにあたって必要なすべての資金を助成金や補助金で賄うというのは難しいでしょう。
よって、企業を運営するための資金として、助成金や補助金の他に別の資金調達方法も必要となります。
クラウドファンディングについては、広くいろんな人から資金を調達できる可能性もありますが、事業自体が魅力的でアピール性のあるものでないと、必要な資金が集まらないということが考えられます。
スモールビジネス・個人事業主
スモールビジネス、すなわち中小企業や個人事業主の資金調達方法として進められるものとしては、日本政策金融公庫からの融資を受ける、信用金庫、信用組合からの融資を受ける、政府や地方公共団体の制度融資を受ける、銀行やビジネス・ローン、ノンバンクからの融資を受けるなどとともに、資産や設備を有しているような場合には、それらを売却したり証券化したりして現金化するという、資金調達方法の選択肢も取れます。
また、企業の事業での売掛金が必要な程度あるような状況であれば、ファクタリングなどによって資金調達をするということも考えられます。
安定した事業を継続している場合などであれば、銀行などからの融資を受けるのも比較的難しくはない可能性があり、日本政策金融公庫や信用金庫、信用組合、銀行から融資を受けられれば、ビジネス・ローンやノンバンクから融資を受けるより、有利な利率で資金調達ができると考えられます。
その他にも、政府や地方公共団体の助成金や補助金を受けたり、クラウドファンディングを利用したりする資金調達方法も考えられます。
ただし、政府や地方公共団体の助成金や補助金を受けるためには、その助成金や補助金の目的に合った給付理由が必要です。
また、クラウドファンディングで資金調達するためには、魅力的な商品や共感できる企業理念などが必要になります。
資金調達が必要となる状況
同じ資金調達方法と言っても、それぞれの状況によって適切な資金調達方法は変ってきます。
それぞれの状況に応じて、これまで説明してきた資金調達方法のうちどのような資金調達方法が適切なのかについて考えてみたいと思います。
開業時・新規事業の立ち上げ時
開業時や新規事業の立ち上げ時は、まだその事業がうまく行くのかどうかが未知数であるという状況であると言えます。
そのため、企業の業績や事業の状況を詳しく審査するような銀行などの融資を受けるのは、比較的難しい状況になることが考えられます。
また、開業時や新規事業の立ち上げ時では、十分な企業の資産や売掛金などもないような状況も考えられるため、これらをあてにするような方法での資金調達も困難であると考えられます。
よって、企業の業績や事業の実績に影響をされることの少ない方法によって、資金調達をする必要があります。
このような状況から、開業時・新規事業立ち上げ時の資金調達として、まず考えられるのは、自己資金による出資や家族、親戚などからの借り入れです。
自己資金による出資であれば、審査が必要ないのは当然のことです。また、家族や親戚からの借り入れも利息が発生しない場合がほとんどです。
ただし、思ったような額が集まらなかったり、キチンと返済をしないと人間関係にひびが入ってしまったりする可能性があるので注意が必要です。
次に考えられるのが、日本政策金融公庫や地方公共団体が行っている制度融資です。
これらの機関には、新しい事業の創業を目的に作られている融資制度がありますので、銀行からの融資などに比べて、比較的容易に融資を受けることができます。
しかし、比較的に容易とは言え、キチンとした事業計画や返済計画を求められること、実際に融資を受けられるまでに少なくとも数ヶ月を要するということはデメリットと言えます。
事業自体が魅力的なものである場合には、クラウドファンディングで資金調達するという方法も考えられます。
事業の拡大時
既に行っている事業を拡大するときの資金調達方法としては、銀行からの借入金、すなわち融資など、実績に基づいた説明で、必要な資金を確保できる資金調達方法が取れると考えられます。
事業が拡大できるということは、対象事業が好調であるということが想定されるので、これまでの実績や今後の見通しをキチンと説明できれば、銀行をはじめとする金融機関から有利な金利で借り入れを行うことができる可能性が高いと思われます。
また、社員株主を募ったり、他の株主を募集したりするなど、増資をするという手段を取るという方法も考えられます。
事業の拡大を考えられるような状況であることから、企業からの配当や株価の上昇を見込んで株式を引き受けたいという人も多く見込まれると考えられます。
ただし、増資をする場合には、一般的に株式を引き受けた者に対して、株主としての発言権を与えることになりますので、企業全体の株主構成の設計などを慎重に行う必要があります。
さらに、事業拡大時にも、政策目的に合えば、助成金や補助金を受けられる可能性もあるので、これらの制度からの資金調達方法も考慮すると良いと思われます。
運転資金の不足時
運転資金が不足した際の資金調達方法については、次のように考えられます。
通常、企業の経営が順調な場合には、運転資金が不足するということはあまり考えられません。
このことから考えられるのは、例えば、取引相手の会社からの売掛金などが回収できず、当面の資金繰りに困ってしまった場合、あるいは、会社の経営状況が思わしくなく、借入金の返済額などの支払いのための資金が確保できないような状況に陥ってしまっているということが考えられます。
いずれにしても、できるだけ早く資金調達が必要であるということが想定されることから、即座に資金調達ができる方法の選択が必要になります。
よって、株式の発行による出資や日本政策金融公庫、信用金庫、信用組合、銀行などから新たな融資を受けるような方法を取ることは難しいと考えられます。
会社経営が順調な時期に、すでに銀行などと銀行融資枠、いわゆるコミットメントラインを設定しているような場合であれば、その枠内で借り入れが可能なので、それを利用するということも考えられますが、この銀行融資枠を設定してもらえる企業というのは、いろんな条件で限られているので、中小企業や個人事業主などがこの枠を設定してもらうことは困難と考えられます。
まず、一番に考えられることは支出の抑制でしょう。
あらゆることの経費削減を徹底的に図って、結果として、必要な資金をねん出ということを考えます。
残業の抑制や交際費、出張費、研修費などの不要不急の支出は徹底的に削減することによって、会社経営の存続のために必要な費用の支出にできるだけ割り当てるようにします。
次に、自社の経営自体に特に問題がなく、当面の短期の資金繰りをまかなうためであれば、審査が厳しくなく、担保や保証人も必要としないビジネス・ローンやノンバンクからの融資を受けるということも考えられます。
しかし、通常の銀行からの融資などに比べて金利が高くなるということは否めません。
また、企業の業績が思わしくないような場合には、資産の流動化も検討する必要があります。
業績が悪い場合には、銀行などの金融機関からの融資を受けること自体が難しくなるうえに、仮に融資を受けることができたとしても、金利が高くなる可能性が高くなります。
するとさらに企業の財務状況を悪化させることにつながり、負のスパイラルに陥る恐れがあります。
このような状況を打破するためには、思いきって企業の資産を流動化して、資金調達するという方法を取って、抜本的に企業の財務状況を立て直すという経営判断も必要になる場合があります。
資産などの流動化にもいろいろな方法があるということは、前述したとおりです。
売却してしまうという方法の他にも、証券化して広く資金調達をするという方法も取ることができます。
また、流動化できる資産などと言っても、不動産や設備などに限らず、商品や在庫品などの動産や他社に対する売掛金や賃貸料などの債権、知的財産権など、さまざまなものを流動化できる可能性がありますので、先々の資金繰りについては、できるだけ早く検討をしておくと、いろんな選択肢を検討できます。
さらに、取引先に対して運転資金を充足できる程度の売掛金がある場合には、ファクタリングを使って運転資金を調達するということも考えられるでしょう。
この場合も、一般的に銀行などの金融機関から通常の融資を受ける場合よりも高い手数料が発生することはデメリット言えます。
まとめ
今回は、企業を経営するうえで欠かせない資金調達方法について解説してきました。
資金調達方法は、業種や企業の状況によって適切な方法がさまざまです。
自社の状況を冷静に判断して、その時々に最適な資金調達方法を選択することが求められます。