銀行融資の審査を受けるポイント|審査の流れ、通らない原因も解説

会社・法人にとって、銀行から融資を受けることは資金繰りの改善や事業の拡大を図るうえで効果的な手段です。しかし、銀行から融資を受けるためには、それぞれ申請する融資制度の審査に通過しなければなりません。

そこで、この記事では、銀行融資の審査に通過しない原因や審査に通過しやすくなるポイントとして一般的に考えられている内容のほか、銀行融資の審査を受ける流れなどをわかりやすく解説します。

会社・法人において融資を受ける際は、融資の審査におけるポイントを押さえて、資金調達を円滑に進めましょう。

銀行融資の審査に通らない原因

会社・法人が銀行融資の審査に通過しない場合、資金使途や信用情報などの要素が主な原因として考えられます。

本章では、銀行融資の審査に通らない原因として主に考えられる内容を7つピックアップし、順番に解説します。

  • 資金の使い道や必要額の根拠が不明瞭
  • 借入金に充てる返済原資を確認できない
  • 信用情報に異動の記録がある
  • ノンバンクからの借入れがある
  • 税金や社会保険料の支払いを滞納している
  • 経常利益が赤字である
  • 銀行ごとの格付けが融資審査に影響することもある

銀行融資の審査に通過しないと考えられる原因をあらかじめ把握しておくことで、次に融資の申請をおこなう際の準備に生かせるため、予備知識として知っておくとよいでしょう。

資金の使い道や必要額の根拠が不明瞭

銀行から自社における資金の使い道や必要とする金額の根拠が不明瞭だと判断された場合、融資の審査に通過しない可能性があります。

銀行は、融資を受ける会社・法人における資金の使い道として運転資金もしくは設備資金を対象とし、これ以外の資金使途は認めていないケースが多いです。

具体例を挙げると、事業計画において人件費や広告宣伝費を過大に見積もっている会社・法人では、銀行に対して、その金額の費用が必要とされる理由を明確な根拠を持って示さなければ、融資の審査に通過しない可能性が高いです。

また、設備資金については、見積書から資金の使い道や必要金額の根拠が確認できなければ、銀行から根拠不明と判断されることがあります。新たに店舗を借りる場合を例にとると、審査にあたって、店舗取得費用の内訳がわかる見積書を提出しなければなりません。

そのため、銀行による融資の審査に通過しなかった会社・法人において、設備投資の資金調達のために再び銀行による融資を受けようとしている場合には、商品・サービスを発注にあたって、その内訳を記載した見積書の作成を取引先に対して依頼しておくことが望ましいです。

借入金に充てる返済原資を確認できない

決算書から返済原資を確認できないと銀行に判断された場合、その会社・法人では融資の審査に通らない傾向があります。

返済原資とは、銀行からの融資や借入に対して返済に充てられる確実な資金のことで、 毎月の確実な収入(家賃収入など)から支出(管理費、積立金など)を除いた額のことです。返済原資が確認できなければ、銀行から融資した資金を返済できる事業者だと判断してもらえず、融資の審査に通りません。

一般的に、会社・法人の返済原資は以下の計算式を用いて算出できます。

  • 返済原資=税引後当期純利益+減価償却費

会社・法人の当期純利益と減価償却費は決算書の損益計算書で確認できるため、銀行による融資の審査では決算書を提出しなければなりません。

なお、返済原資の確認にあたっては、損益計算書だけでなく資金繰り表の提示を求められるケースもあります。資金繰り表からは将来の収支が予想できるため、借入金を返済する余地があるかどうかをチェックすることが可能です。

信用情報に異動の記録がある

会社・法人の信用情報に傷がついていることも、銀行による融資の審査に通らない原因のひとつとして考えられています。信用情報とは、クレジットやローンの契約や申し込みに関する情報で、客観的な取引事実を登録した情報のことです。

「信用情報に傷がついている状態」とは、信用情報機関が管理する「信用情報」に「異動」や「延滞」「貸倒」「官報公告」「代位弁済」といった情報が登録されている状態を意味します。

このうち、信用情報に異動の履歴があると、過去に支払いの延滞・債権回収・債務整理・破産申立など銀行からの信頼を損ねる契約不履行があったことを意味します。

銀行が利用している個人信用情報機関には「全国銀行個人信用情報センター」「CIC」「日本信用情報機構(JICC)」の3つがあります。

このうち、個人信用情報機関である日本信用情報機構が、法人の信用情報機関の役割も担っています。日本信用情報機構にはさまざまな業態の金融会社が加盟しています。消費者金融・クレジットカード会社・信販会社・リース会社・保証会社・銀行・信用金庫・信用組合・信用保証協会などです。

法人の信用情報をチェックしようとする場合、代表者個人の信用情報に注目することもあります。企業の融資の連帯保証人が代表者となっている場合はなおさらです。代表者の個人情報に傷がついている場合、法人としての信用も低いと判断され、融資に通らない可能性が高まります。

ノンバンクからの借入れがある

ノンバンクとは、預金業務や振込などの為替業務を行わない金融業者のことです。一般事業者と同様に、銀行からの借入金を融資金の元手とするため、貸出金利が高い傾向があります。貸出金利が高い分、審査手続きが簡単であったり、審査そのものが甘くなったりする傾向も見られます。

ノンバンクからの借入がある会社・法人では、銀行による融資の審査に通りにくくなると考えられています。

なぜなら、銀行は、ノンバンクからの借入を資金繰りの苦しい会社・法人が取る行動として考えているためです。実際に、資金繰りに余裕のある会社・法人がノンバンクを活用するケースは珍しく、ノンバンクを利用しているという事実は多くのケースで資金繰りが苦しい事を体現しています。

つまり、銀行よりも金利の高いノンバンクを利用することは、銀行から融資を受けられないほど経営状態が悪い会社・法人であると判断されてしまうのです。

会社・法人において、ノンバンクから借り入れしている金額が大きければ大きいほど、銀行による融資が通りにくくなります。ノンバンクからの借入がある場合は、まずそちらを返済してから銀行による融資に申し込みましょう。

税金や社会保険料の支払いを滞納している

本来であれば支払うべき税金・社会保険料・公共料金などを支払っていない会社・法人では、銀行から融資の返済能力がないと判断されます。税金や社会保険料について、期限が過ぎた請求がある場合には、その支払いを優先してください。

なお、税金や社会保険料の滞納に関わる情報は、信用情報機関では管理していません。税金や社会保険料の未払額の有無は納税証明書から、社会保険料は決算書からそれぞれ支払い状況が推察されます。

経常利益が赤字である

決算が赤字の会社・法人の場合、銀行による融資の審査に通らない可能性があります。決算が赤字の会社・法人では収入が支出を下回り損失を出しているため、与信面で問題があると銀行から判断される可能性があるためです。

具体的には、銀行は、融資の審査をするうえで、融資を申し込んだ会社・法人に対して決算書の提出を求めます。これは、決算書の損益計算書に記載されている経常利益が黒字か赤字かをチェックするためです。

経常利益が黒字の場合、利息を支払った後も利益が残ることから、銀行から融資先として問題がない会社・法人であると判断される可能性があります。

ちなみに、赤字の原因がコロナ禍のように社会的要因や震災などの災害にある場合、赤字が一時的に発生したものであるという理由や背景を明確に説明できれば、銀行から融資を受けられる可能性があります。

銀行ごとの格付けが融資審査に影響することもある

それぞれの銀行が設けている格付けが、融資の審査の可否に影響を及ぼす場合があります。格付けとは、銀行が融資先の債務の支払能力などを評価し、ランク付けした指標のことです。銀行は決算書などをもとに融資先の信用力を格付けし、与信管理に活用しています。

与信管理とは「この企業と取引しても大丈夫か」ということに加えて、「この企業とはいくらまで取引額を増やしても大丈夫か」という判断を取引先ごとに設定・定期的に見直し、借入金を回収できないリスクを抑えることです。

格付けの区分方法や表記は、銀行および格付会社によって異なります。また、格付けは毎年更新され、一度決まった信用格付けがそれ以降も継続するわけではありません。銀行融資に通らなかった原因が格付けにあると予想している場合、会社・法人の業績を改善することで格付けが上がる可能性もある点を把握しておきましょう。

銀行融資の審査に通過しやすくなるポイント

本章では、会社・法人が銀行による融資の審査に通過しやすくなるポイントとして、代表的な7つの内容をピックアップし、順番にわかりやすく解説します。

  • 銀行の格付けで良い区分に該当する
  • 説得力のある良質な事業計画書を作成する
  • 資金使途を明確にする
  • 根拠のある返済計画を作成する
  • 担保や保証人を準備する
  • 融資を望む銀行と良好な関係を構築する
  • 個人事業主の場合は収入を安定させることも大切

銀行の格付けで良い区分に該当する

一般的に、銀行による融資の審査では、財務状況や成長性などに応じて融資先企業を格付けし、以下の6つのいずれかに区分します。

  • 正常先
  • 要注意先
  • 要管理先
  • 破綻懸念先
  • 実質破綻先
  • 破綻先

要注意先以下の格付けに該当する会社・法人では、銀行による融資の審査に通る確率が低下します。たとえ融資を受けられたとしても金利が高くなる傾向があるため、銀行から融資を受けたい会社・法人では格付けを上げることが重要です。格付けを上げるためには、「定量評価」「定性評価」という2つの評価を上げることが効果的です。

まず、定量評価とは、会社・法人の決算書の情報から「収益性」「安全性」「成長性」「債務返済能力」を評価するものです。

  • 収益性:黒字決算かどうか
  • 安全性:自己資本と負債のバランスは良いか
  • 成長性:売上は高いか、伸びているか
  • 債務返済能力:現時点のキャッシュフローで、以下の債務を何年で返せるか

定量評価は短期間で改善できるものではないため、日頃から銀行による融資が必要になったときのことを考えて動いておく必要があります。

続いて、定性評価とは、決算書以外の情報から会社・法人を評価するものです。具体的には、以下のような点がチェックされます。

  • 事業の将来性
  • 市場の成長性
  • 経営計画策定能力
  • 販売力
  • 技術力

定性評価は定量評価よりも重要度が低い評価であり、定性評価の内容が良くても定量評価の内容が悪ければ、企業の格付けが変わることはほとんどありません。

しかし、銀行は、金融庁から融資の審査において定量評価だけでなく、企業の将来性なども考慮して判断するよう求められているため、ある程度は定性評価が審査結果に影響することが考えられます。

説得力のある良質な事業計画書を作成する

銀行による融資の審査結果は、融資を申し込む会社・法人の事業計画書の出来にも大きく影響を受けます。そのため、事業計画書には、自社の事業を継続させるだけでなく、事業を成長させていき伸ばしていく方法を具体的に記載しましょう。

事業計画書は、希望する融資額の根拠を示すうえでも重要な書類です。例えば、機材・設備購入・支社設立などのための設備資金であれば、どれほどの設備を用意するのか事業計画書に記載しておくと、融資希望額の妥当性が伝わりやすくなります。

そのほか、会社・法人の事業について明確なビジョンがあることを銀行に示すためには、市場調査・競合他社・ターゲット層の選定も大切です。

資金使途を明確にする

銀行から融資を受けたい会社・法人では、融資の使い道や融資希望額の妥当性を示すことも大切です。例えば、以下のように銀行に対して示します。

  • 生産性向上のために〇〇という設備を導入したいため、その購入費として1,000万円融資してほしい
  • 1ヶ月あたり300万円の経費がかかるため、3ヶ月分の900万円を運転資金として融資してほしい

また、上記の根拠を示すために、設備の見積書や決算書などの書類も提出しましょう。

根拠のある返済計画を作成する

銀行にとって、融資を申し込む会社・法人に関する最大の関心事は返済できるかどうかであるため、返済計画は特に重視されます。

そのため、融資を申し込む会社・法人からすると、どのようにして融資額を返済するのかについて、楽観的な内容ではなく、完済までの事業の推移見込やさまざまなリスクなどを織り込んだ、実現可能な返済計画書を提出しましょう。

担保や保証人を準備する

銀行による融資の審査を通過したい会社・法人では、担保と保証人を確保することも大切です。融資を行う銀行からすると、万が一の場合でも担保を売却したり保証人に請求したりすれば、貸付金を回収できるためです。

ただし、担保や保証人を準備することが、必ずしも融資の審査でプラスに働くとは限りません。銀行によっては、「担保や保証人を利用しないといけない財務状況」にある会社・法人だと判断される可能性があるためです。

また、事業と関連性の高いものを担保に選択した場合、回収されると事業を継続できなくなるおそれがあります。財務状況が正常で、なおかつ担保や保証人も準備できるケースで活用できる、信用力を上げるための手段のひとつとして検討しておきましょう。

融資を望む銀行と良好な関係を構築する

銀行による融資では融資を申し込む会社・法人と銀行が良好な関係を築けていることも大切なポイントです。付き合いがまったくない場合と、普段から少額でも取引がある場合とでは、どうしても印象が変わってきます。

融資を申し込む会社・法人からすると、銀行との間で以下のようなコミュニケーションを取ることで、銀行の担当者と顔見知りになれるだけでなく、自社の情報を把握してもらえます。

  • 銀行の担当者に会社・法人の状況について話しておく
  • ときどき少額融資を受ける
  • 社員の給与口座に利用する

個人事業主の場合は収入を安定させることも大切

個人事業主が銀行から融資を受けるためには、一般的に以下の条件を満たしていることが求められます。

  • 開業届を提出している
  • しっかり確定申告を行っている
  • 黒字決算である

また、個人事業主は法人と比べて収入が不安定になりやすく、金利が高くなったり保証付融資になったりするケースが多いです。そのため、なるべく有利な条件で銀行から融資を受けたい個人事業主は、毎月安定した収入を得ることを意識しましょう。

銀行融資の審査を受ける流れ

本章では、会社・法人が銀行から融資を受けるにあたって審査を受ける際の流れを4つのステップに分けて解説します。

  1. 融資の相談と申込み
  2. 必要書類の準備と提出
  3. 面談と審査
  4. 融資の実行

それぞれのステップの内容を順番に解説します。

①融資の相談と申込み

まずは借入を検討している銀行に対して、融資の相談と申込みを行います。

事業性資金の融資を希望する場合、支店の窓口に訪問し直接申込みを行う方法や、 担当者に対して電話連絡を行い手続きを進めてもらう方法が一般的です。もしも懇意にしている担当者がいれば、その方に相談してもよいでしょう。

これまで融資を受けた実績のない銀行から融資を受けたい場合、申込金額のほか、どのような返済計画を立てればいいのか、借入期間はどうするかなどを入念に確認しましょう。

②必要書類の準備と提出

会社・法人では、融資を受けるために、それぞれの融資制度を運用する銀行が指定する書類を提出しなければなりません。各種申込書類は、銀行による所定の書類を使用します。

そのほか、会社・法人自身で準備する書類も多数あります。例えば、設備資金の融資を申し込む場合には見積書や事業計画書が、開業資金融資を申し込む場合には創業計画書などの書類が必要です。融資の資金使途や担保、連帯保証人の有無によって必要書類が異なるため、事前に確認しておきましょう。

③面談と審査

続いて、銀行によって面談と審査が実施されます。

面談では、会社・法人が提出した書類をもとに質問などが行われます。銀行に直接出向くケースもありますが、店舗・オフィス・工場に訪問するパターンもあります。これは事業の内容や設備の状況を確認したうえで、融資の判断を行うためです。

審査では、大まかに融資の実行可否および融資額の2つが決められます。ここからは、それぞれの審査内容について順番に詳しく解説します。

融資の実行可否を決める審査

まずは、融資を行う銀行によって、融資を申し込んだ会社・法人において、借入を返済できそうかどうか、返済原資はあるのかが審査されます。

具体的には、「税引き後利益+減価償却費」の計算式で返済原資がチェックされるほか、損益計算書から償却不足や役員報酬等の妥当性が判断されます。

こうして算出された返済原資が、純借入額の10分の1以上あれば、銀行から正常な返済ができており、追加融資分の一定額も返済できる会社・法人であると判断されるのが一般的です。

上記に加えて、その会社・法人で債務超過に状態に陥っていなければ、銀行から融資の実行が可能だと判断されるケースが多いです。

日本政策金融公庫や保証協会保証付き融資は、上記の基準に対して、寛容な判断をもらえるケースも少なくありません。これに対して、銀行が独自に行うプロパー融資は、上記の基準に対して厳格に判断を下す傾向があります。

融資額を決める審査

銀行により融資の実行が可能だと判断されると、次は融資を申し込んだ会社・法人の事業計画書をもとに必要としている融資額の妥当性が検討されます。

具体的には、必要としている融資額に対して売上目標が大きすぎないか(小さすぎないか)などがチェックされます。必要としている融資額に対して売上目標が大きすぎる場合、その蓋然性の説明について、融資を申し込んだ会社・法人は苦慮することが想定されます。

反対に、売上目標が小さすぎると、その借入を返済することができず、融資の審査に通らなくなる可能性があります。そのため、融資を申し込む会社・法人では、売上目標と、必要とする融資額のバランスを検討する必要があります。

銀行の融資審査における5原則

銀行が融資の申込者に対して、融資を行うかどうかを判断するうえで考慮するべき基本原則として、公共性・安全性・収益性・流動性・成長性という5つの原則があります。下表に、融資の5原則の内容をまとめました。

公共性 公序良俗に反する融資は行わない。銀行は公表性を重視する。
安全性 銀行の原資は預金であるため、確実に融資を返済してもらわなければならない。そのためにはしっかりとした審査をする必要がある。
収益性 銀行は私企業であるため、安定して適正な利益を上げる必要がある。
流動性 銀行の原資は預金であるため、資金が滞ることがないようにしなければならない。常に資金の流動性に気を配る必要がある。
成長性 融資先の成長は銀行の成長にも繋がる。成長する企業に対する融資を行う。

銀行では、融資案件に関して融資の5原則を大前提として審査するため、融資の利用を検討している会社・法人では、この5原則があることを意識しておくとよいでしょう。

参考:経済法令研究会「法人融資渉外基本コース1」

④融資の実行

審査を通過し融資の実行が決定すると、契約の段階に進みます。契約締結が済むと、融資のお金が送金されるので確認しましょう。

銀行融資の審査にかかる期間

金融機関ごとの融資の審査期間の大まかな目安を下表にまとめました。

日本政策金融公庫 銀行融資(プロパー融資) 信用保証付き融資※1 地方自治体の制度融資※2
3週間程度 2〜4週間程度 2〜3週間程度 2ヶ月程度

※1銀行融資のうち、信用保証協会が融資の保証を行う融資のこと。信用保証協会とは、信用保証協会法にもとづいて、中小企業等の金融を円滑にするために設立された公的機関。

※2中小企業の経営安定化、創業支援、産業振興などの経済発展のためにある制度であり、金融機関からの通常の融資と比べて低金利で融資を受けやすくするために、各地方自治体が行っている事業資金の融資あっせんのこと。

日本政策金融公庫の場合、公式サイトのQ&Aにて、申込から融資決定まで「平均的には、3週間程度」と記載されています(国民生活事業の場合)。

銀行でプロパー融資を受ける場合は、2〜3週間で審査が完了するといわれています。ただし、担保を設定する場合は、担保を評価する時間が1週間ほど余分にかかるため、1ヶ月前後かかります。

信用保証付き融資では、保証協会の審査で3日〜1週間程度、銀行の融資審査で1日〜1週間程度、合計で2〜3週間程度かかると考えられています。

なお、地方自治体の制度融資では、信用保証付き融資の審査以前に、自治体による確認作業が行われることがあり、その場合には審査期間は合計で2ヶ月程度かかると考えておくとよいでしょう。

参考:日本政策金融公庫「よくあるご質問 創業をお考えの方」

銀行融資の審査に落ちた場合に検討される資金調達方法

銀行による融資の審査に落ちた会社・法人では、他の資金調達手段を検討することもひとつの選択肢です。具体的には、以下の機関や手段を利用して資金調達を行うことが可能です。

  • 日本政策金融公庫
  • ノンバンクのビジネスローン
  • カードローン
  • ファクタリング

それぞれの特徴を解説します。

日本政策金融公庫

銀行による融資の審査に落ちた会社・法人では、銀行以外の金融機関による融資を検討するのも良いでしょう。例えば、日本政策金融公庫による融資の利用が考えられます。

日本政策金融公庫による融資を利用する主なメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 創業初期でも申し込みやすい
  • 無担保・無保証の融資制度がある
  • 民間の金融機関よりも金利が低め
  • 民間の金融機関よりも返済期間が長め
  • 民間の金融機関よりも手続きにかかる工数が少なめ

ただし、日本政策金融公庫による融資を利用する際は以下のようなデメリットもある点を把握しておきましょう。

  • 中小企業事業の場合、繰り上げ返済ができない
  • 審査期間が長め

日本政策金融公庫からの融資を受けることを検討する場合、まずは問い合わせを行い、自社の状況に合った融資制度を紹介してもらうことを検討しましょう。

ノンバンクのビジネスローン

銀行による融資の審査が通らなかった会社・法人では、ノンバンクのビジネスローンの利用も選択肢のひとつとして挙げられます。

ノンバンクのビジネスローンは、銀行による融資と比べると利用可能金額が低く、金利が高めに設定されている一方で、銀行の審査に通らなかった会社・法人であっても融資を受けられる可能性があります。

カードローン

「銀行融資に落ちてしまったものの、どうしても事業資金が必要」という会社・法人では、カードローンで事業資金を借りるという方法もあります。カードローンとは、金融機関やカード会社などの貸金業者が提供している融資サービスのことで、銀行融資よりも審査が早く、カード1枚でATMから現金を引き出せる点がメリットです。

カードローンで事業資金を調達することも可能ですが、全てのカードローンで行えるわけではありません。事業資金として使えるカードローンは大きく分けて、ビジネクストのような「事業資金専門カードローン系」と楽天スーパービジネスローンのような「銀行系」とアイフルの事業サポートプランのような「消費者金融系」の3タイプがあります。

ファクタリングを利用すれば即日で資金調達が可能

銀行による融資の審査が通らなかった会社・法人では、ファクタリングによって資金調達できる可能性もあります。

ファクタリングとは、自社の持っている売掛金を売買して資金調達を行う方法のことです。ファクタリングは売買取引となるため借金とならないうえ、個人の信用度に関係なく実施できる審査基準の低い資金調達法だといえます。

ファクタリングでは審査が通りやすく、キャッシュフローを改善するために利用する会社も少なくありません。ただし、手数料(金利)が高い傾向がある点に注意しましょう。

ファクタリングのメリット
  • 早い時期に現金化が可能になる
  • 資金繰りが改善される
  • 返済しなくてよい
ファクタリングのデメリット
  • 個人事業主は利用できない
  • 手数料と掛け目がかかってしまう
  • 契約料や費用が発生する
  • 譲渡禁止債権は利用できない

銀行融資の審査に関してよくある質問

最後に、銀行融資の審査を受けることを検討している会社・法人の方からよくある質問と回答をまとめました。

銀行融資の種類は?

ひとことに銀行融資といっても、以下のような種類があります。

  • 信用保証協会の保証付き融資
  • プロパー融資
  • 売掛債権担保融資
  • 不動産担保融資
  • ビジネスローン(事業性資金融資)
  • カードローン

銀行融資には、信用保証協会が連帯保証人になる保証付き融資、保証付き融資を利用しない銀行独自の融資、売掛先の承諾不要の売掛債権担保融資、自社で所有する不動産を担保にして受ける融資などがあります。

そのほか、融資までのスピードが速く審査に通りやすいビジネスローンや、ATMで簡単に借入を行えるカードローンなども銀行融資のひとつです。

銀行融資を受けるメリットとデメリットは?

融資制度を設けている金融機関は銀行以外にも存在しますが、ここでは銀行融資から融資を受けるメリットとデメリットに絞って紹介します。

まず、銀行融資を受ける主なメリットは、以下のとおりです。

  • 比較的金利が低い
  • 比較的限度額が大きい
  • 優良な借入実績を作ることができる

反対に、銀行融資を受ける主なデメリットは、以下になります。

  • 保証や担保を求められることがある
  • 融資までに一定の時間がかかる

銀行融資の審査基準は厳しいのか?

銀行融資の審査は、厳しいもしくは甘いといった判断を行うことはできません。なぜなら、銀行融資の審査基準が公開されておらず、審査難易度も一概には断言できないためです。

銀行は融資の審査において「この条件なら審査に通過できる」と明記できる基準を設定していないと考えられています。銀行は総合的な判断により融資審査の可否を決定しているため、銀行融資は審査基準を比較することができません。

銀行融資の審査を受けるための利用資格とは?

それぞれの銀行が設けている利用資格を満たしていない会社・法人は銀行融資に申し込めません。利用資格はそれぞれの銀行によって異なるため、支店に問い合わせてみましょう。

例えば、三井住友銀行が中小企業向けに展開している「ビジネスセレクトローン」では、以下のような項目を利用資格として挙げています。

  • 業歴2年以上であること
  • 取り扱い窓口(エリア・法人営業部・支店)で取引可能な地域に所在すること
  • 最新決算期において、債務超過でないこと(債務超過とは、貸借対照表の純資産の部がマイナスであること)
  • 申し込み時点において、税金の未納がないこと

参考:三井住友銀行「資金の調達 中小企業向け融資 ビジネスセレクトローン」

まとめ

会社・法人の資金調達法として、銀行融資は非常に便利な手段です。銀行融資は審査を通過しなければ利用できませんが、一度にまとまった資金を調達できます。

銀行融資の審査にスムーズに通過するためには、銀行の格付けで良い区分に該当することはもちろん、説得力のある良質な事業計画書を作成することも大切です。そのほか、資金使途を明確にしたり、根拠のある返済計画を作成したりすることも、会社・法人が銀行融資の審査に通過するうえで大切です。

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