不動産競売手続きとは
競売は、裁判所の手続きでおこなわれる不動産の強制的な競り売りです。住宅ローンなどの借金返済を滞納すると、債権を回収するために債権者が競売を申し立てることがあります。
この記事では、不動産競売の流れについてM&A弁護士がわかりやすく解説します。借金やローンの返済で困っている人や、不動産を担保にしている人は、不動産競売手続きの流れを知って早い段階で対処してください。
不動産競売手続きの流れ
まずは簡単に競売全体の流れを確認します。競売の流れは全体で大きく5つのステップにわかれるのが特徴です。
- 滞納による督促
- 期限の利益の喪失
- 代位弁済
- 競売の申し立て
- 競売
住宅ローンを滞納している場合などは、任意売却(債務者が任意で不動産を売却し、売却金で住宅ローンを清算する)で対処したり、金利や月あたりの返済額を交渉したりと、競売を止めるために動くことがあります。
しかし、早い段階で競売を止めるために動けば不動産を失わずに済む可能性もありますが、滞納や催告を放置し、競売の手続きが進んでしまうと、競売を止めることは難しくなってしまうのです。
ステップ①滞納により督促を受ける
借金の返済を滞納したからといって、即座に競売になるわけではありません。まず債権者は「支払いを忘れていませんか」というかたちで、督促をおこないます。本当に支払いを忘れている可能性や、口座の残高不足を知らずにいるケースがあるからです。
借金の督促は手紙などでおこなわれますが、債権者側が電話などで連絡してくることもあります。また、金融機関によっては「直に話がしたい」といってくることもあるのです。滞納2カ月ほどはある程度、ソフトな文面や口調による督促がおこなわれるのが特徴です。
競売は債権者にも手続き費用が発生しますし、競売手続きをしなければならないという手間もあります。競売せずに返済してもらえるなら、それに越したことはありません。
滞納が3カ月を超えたあたりから「滞納は故意だ」と考えて債権者側は支払いを促すようになります。3カ月目あたりになると「このままだと期限の利益を喪失します」と、やや強い文面や口調になるのです。催告には内容証明郵便が使われることもあります。
この段階になると、信用情報に滞納が記録され、新規の借り入れやクレジットカードの利用などが難しくなるのです。いわゆるブラックリストです。
ステップ②期限の利益の喪失による一括返済を請求される
督促や催告に応じない、あるいは金銭的な事情から応じることができないでいると、やがて期限の利益を喪失します。滞納から3~6カ月ほどの段階です。
期限の利益を喪失する際は金融機関などの債権者から予告通知が届き、期日の指定がおこなわれます。債権者側が指定した期日を過ぎると、債務者は期限の利益を喪失するという流れです。期限の利益の喪失とは「分割払いが許されなくなり、一括払いしなくてもならない」ことを意味します。
借りたお金を分割払いできているのは、期限の利益があるからです。たとえば2,000万円借りて、毎月10万円ずつ返済していたとします。債務者には毎月10万円支払えばよく、残金のついてはその時点で支払わなくていいという利益があるのです。
期限の利益を失うと分割払いでき、残金についてはその時点で払わなくていいという利益がなくなります。よって、債権者に借金の残金を一括払いしなければいけません。
先ほどの例で説明すると、100万円払ったところで滞納して期限の利益を喪失、一括返済になると、残りの1,900万円を一気に払わなければいけないのです。
ステップ③保証会社による代位弁済がおこなわれる
債権者に一括請求された場合、この一括請求に応じる必要があります。すでに期限の利益を喪失しているわけですから、債務者側が「分割払いにしてください」と交渉しても無駄です。分割払いの権利を喪失しているからです。
債権者に一括請求されても、住宅ローン残金などを一括払いできる資力を持つ人は少ないことでしょう。それだけの資力があれば、滞納せずに払っているでしょうし、そもそもお金を借りる必要などなかったはずです。一括請求されても、一括で支払えるケースは稀になります。
保証会社と契約していた場合は、一括請求は保証会社に対しておこなわれます。保証会社が債権者の一括返済に応じて残金を代わって支払い(代位弁済)、その分を債務者に請求するという流れです。どの道、債務者は請求に応じなければならないということです。
ステップ④債権者が不動産競売手続き(申し立て)をする
債権者が一括返済を請求しても、債務者は請求に応じることができません。債権者は債権を回収しなければ損害を受けますから、何とか貸した分あるいは立て替え分を回収しようとします。このときに登場するのが不動産競売です。
不動産を競売し、債権者が競売の売却金から回収するという流れになります。債権者が裁判所に不動産競売を申し立てます。
ステップ⑤不動産競売手続き~不動産競売
債権者の申し立てにより不動産競売手続きがスタートすると、裁判所による不動産の確認がおこなわれます。その後に不動産競売のスケジュールを決め、競り売り方式で不動産を売却するのです。
不動産競売では債務者の意見や要望は一切無視されます。強制的に不動産の確認がおこなわれ、スケジュールについても裁判所の主導です。
競売により不動産の買主に不動産の権利が移ったら、債務者の都合に関係なく退去しなければいけません。
最後に
不動産競売手続きの流れについて説明しました。
不動産競売に対処するためには、不動産競売手続きのどのステップなのかを常に意識し、適切な方法で対処することが重要になります。また、ステップによっては不動産競売を止めることが極めて難しい、あるいはできないため、迅速に行動することが重要になるのです。
住宅ローンや借金の滞納は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。