不動産ローン(不動産担保融資)の滞納
金融機関などはいろいろなローンを扱っています。不動産担保ローンも、金融機関などが扱っているローンのひとつです。不動産担保融資の返済が滞ったら、担保にした不動産はどうなってしまうのでしょうか。
- 不動産担保融資とは
- 不動産担保融資を滞納したらどうなるのか
- 不動産担保融資を滞納した後の流れ
- 不動産担保融資の返済に困ったときの対処法
不動産担保融資の滞納について4つのポイントで弁護士が解説します。
不動産ローン(不動産担保融資)とは
不動産担保融資は「不動産を担保にして融資を受けるローン(融資)」のことです。
不動産担保融資の最大の特徴は、融資する側に担保として不動産を提供することになります。担保とは、借りたお金を返済できないときのための「借金のかた」のようなものです。
不動産以外にも融資の際に担保にできる財産はありますが、不動産担保融資の場合は不動産を担保に使います。融資の中でも不動産を担保に使うサービスだからこそ「不動産担保融資(不動産担保ローン)」という名前になっているのです。
融資を受ける際に担保にできる不動産を金融機関などに差し入れ、担保として価値は十分かなどを審査します。融資の担保として十分だという評価が出たら、担保にする不動産に抵当権を設定し、融資を実行するという流れです。
不動産ローン(不動産担保融資)のメリットとデメリット
不動産担保融資の滞納についてお話しするために、不動産担保融資の基礎知識として、簡単にメリットとデメリットにも触れておきます。
不動産ローン(不動産担保融資)のメリット
不動産担保融資のメリットは3つあります。
- 不動産という担保があるため高額の融資を受けられる可能性がある
- 不動産という担保があるため融資の返済期間が比較的長めになっている
- 不動産所有者が不動産を担保にすることにより連帯保証人にならずに済む可能性がある
不動産担保融資は不動産という価値のある担保を提供しますから、担保に合わせて高額の融資が期待できます。また、滞納の際は不動産という担保から融資したお金を回収できるため、返済期限も長く取ってもらえる傾向にあるのです。
不動産という担保を不動産所有者が提供することで、不動産所有者は連帯保証人にならずに済むというメリットがあります。ただし、代表者は連帯保証人になりますので注意してください。
高額融資を受けたい。返済期間を長くしたい。このようなときにメリットのある融資方法が不動産担保融資なのです。
不動産ローン(不動産担保融資)のデメリット
不動産担保融資のデメリットも3つです。
- 不動産の担保としての価値を審査するため融資実行まで時間がかかる
- 返済が難しくなったときは担保不動産から回収されてしまう
- 契約時や中途解約時の費用が発生することがある
不動産担保融資は即日融資とはいきません。担保としての価値を確認し、その上で担保設定(抵当権の設定)をする時間が必要です。どうしても融資実行まで時間がかかってしまいます。また、不動産を担保にしますので、返済が難しくなると担保不動産から回収されるというデメリットがあるのです。
不動産担保融資は契約時に登記や融資の費用が必要になることがあります。途中解約の際にも解約手数料(違約金)の支払いが必要になる可能性があるのです。
不動産ローン(不動産担保融資)を滞納したらどうなるのか
不動産担保融資でお金を借りて返済が難しくなった場合は、担保にした不動産から返済分を回収される流れになります。具体的には、担保にした不動産を競売されて、競売の売却金から融資した金融機関などがお金を回収するという流れになるのです。
不動産担保融資を滞納すれば、競売で不動産を失うことにつながります。
不動産ローン(不動産担保融資)を滞納した後の流れ
不動産担保融資を滞納しても即座に競売により不動産を失うわけではありません。たとえば2020年10月5日が返済期限だからといって、翌6日に即座に不動産競売が実行されるわけではないということです。
不動産担保融資を滞納してから不動産を競売されるまでは、1年~1年半ほどの期間が目安になります。不動産担保融資を滞納してから競売によって不動産を売却されるまで、時系列に沿って流れを見ていきましょう。
不動産ローン(不動産担保融資)滞納1ヶ月目は電話やメール・手紙での督促
不動産担保融資の返済を滞納したからといって、金融機関側がいきなり強固な態度を取るわけではありません。まずはメールや電話、手紙により「返済をお忘れではないですか」とソフトな督促がおこなわれます。債務者によっては口座に入金を忘れていたり、突発的な出費により残高不足になっていたりする可能性があるからです。
状況確認も含めて手紙やメールなどで督促がおこなわれるのが滞納1ヶ月目になります。
不動産ローン(不動産担保融資)滞納2ヶ月~3ヶ月には来店依頼や督促状が届く
この段階になると、融資した金融機関側も、ただの口座への入金忘れなどではないと判断します。なぜ滞納しているのか。なぜ返済できないのか。実際に金融機関に来店して説明して欲しい旨、金融機関から連絡が届きます。
督促状も滞納が続いたときに将来的な競売を見据えた文面のものが届くようになるのです。滞納1ヶ月で届いていたようなソフトな文面ではなく、「返済して欲しい」というやや強い文面に変化します。
この段階になると、信用情報に異動情報(金融事故情報)も記録されます。異動情報があると、異動情報が抹消されるまで、新規借り入れが難しくなるのです。
不動産ローン(不動産担保融資)を滞納3ヶ月ほどで債務者に催告書や期限の利益喪失通知
不動産担保融資を3ヶ月ほど滞納したところで、債務者に対して催告書が届きます。催告書は「返済して欲しい」と強く要望する督促状と同じく返済を促すために送付されますが、内容に「法的手続きを取ります」などの文言がある点が特徴になります。
督促状と催告書は到着の順番が逆になることもあるのです。ただ、催告書が届いた時点で金融機関側は競売を視野に入れて動いていると考える必要があります。
また、不動産担保融資の滞納3~6ヶ月頃になると、期限の利益喪失通知も届きます。
不動産担保融資を分割で返済できていたのは期限の利益があったからです。期限の利益を喪失すると、もはや分割払いは許されません。融資返済の残りを一括返済しなければならないのです。
たとえば、融資返済が残り2,000万円残っている段階で期限の利益を喪失すれば、残り2,000万円を一括返済しなければならないわけです。
不動産ローン(不動産担保融資)滞納6~7ヶ月で代位弁済通知が債務者に届く
不動産担保融資の滞納が6~7ヶ月になると、債務者のところに代位弁済通知が届きます。
代位弁済とは「代わって返済すること」を意味します。不動産担保融資の保証会社が債務者に代わって金融機関に返済し、債権者が金融機関から保証会社に移ったことを意味します。
なお、不動産担保融資で保証会社を利用していない場合は、保証会社の代位弁済はあり得ません。よって、代位弁済通知が届くこともありません。
不動産ローン(不動産担保融資)滞納8~9ヶ月で差押通知や競売の開始決定通知が届く
不動産担保融資を滞納して8~9ヶ月ほど経過すると、不動産を差押えた旨の通知が届きます。差押通知は、競売のために不動産を押さえ、本格的に競売手続きに移るという通知のことです。
差押通知が届いたら、次は競売開始決定通知が届く流れになります。競売開始決定通知は、裁判所に債権者が競売を申し立て、その申し立てを裁判所が受理して競売手続きに入ったということです。
不動産ローン(不動産担保融資)滞納10ヶ月ほどで執行官の不動産現地調査がおこなわれる
不動産を競売で売却するためには、不動産の状況がわからなければいけません。不動産の状況を確認するために、執行官が現地調査に訪れます。滞納10ヶ月ほどでこの現地調査がおこなわれる流れです。
現地調査の際は執行官から「なぜ競売になったのか」「不動産には誰か住んでいるか」などの質問があります。不動産内の写真も資料として撮影されることになるのです。
現地調査は法律で認められているため、債務者側の都合で拒むことはできません。執行官は勝手に不動産内に入ることができ、必要なら鍵を壊すことも可能です。
不動産ローン(不動産担保融資)滞納13ヶ月以降は競売の手続きが順次進む
執行官の不動産の現地調査が終了し、大体滞納13ヶ月目になると競売の手続きが流れに沿って進みます。競売不動産の情報が公開され、不動産投資家や不動産屋などによる競売がおこなわれます。
競売の取り下げができるのは、期間入札の開始日前日までです。このタイミングまで取り下げのために動いていなかったり、間に合わなかったりすると、もはや担保不動産の競売売却を防げません。不動産を手放すしかなくなります。
競売により落札された不動産売却金の入金がおこなわれると、不動産の所有権移転がおこなわれます。同時に、不動産に住んでいた人は退去しなければいけません。
以上が不動産担保融資を滞納した後の流れになります。おおむね、1年~1年半ほどの時間をかけて競売に向けてカウントダウンがおこなわれ、最終的に競売で不動産を失うという流れです。
不動産ローン(不動産担保融資)の返済に困ったときの対処法
不動産担保融資の返済に困ったときはふたつの対処法があります。
不動産担保融資の返済が難しいときの対処法は「相談」です。金融機関や弁護士に早い段階で相談し、適切な対処をすることが重要です。
金融機関に「いつ返せるか」などを明確にして相談をおこなう
金融機関に返済が難しいことや、「いつなら返済できるか」を伝えて相談することが対処法のひとつになります。
不動産担保融資の返済が難しいからといって金融機関からの督促や連絡を無視していると印象はマイナスです。早い段階で相談すれば、金利や月あたりの返済額を調整する方向で話がまとまるかもしれません。
不動産担保融資の返済が難しいから無視するのではなく、滞納初期あるいは滞納する前に、不動産担保融資を契約した金融機関に相談してみましょう。
不動産ローン(不動産担保融資)の返済が難しい場合は迅速に弁護士に相談する
不動産担保融資の返済が難しい場合のふたつ目の対処法は、弁護士への相談です。
不動産担保融資の返済で困っている場合、返済は不動産担保融資のみではないケースがあります。他にも返済が重なっており、返済苦に陥っている可能性があるのです。弁護士が借り入れ状況や返済状況を整理した上でそれぞれ対処したり、適切な手続きなどで対処したりすれば、解決できる可能性があります。
どのように返済状況を改善するかはケースバイケースです。競売の手続きが進行する前に弁護士に相談してください。金融機関に相談する前に弁護士に相談し、金融機関との交渉も含めてアドバイスを受けてもいいでしょう。
最後に
不動産担保融資を滞納すると、最終的に競売によって不動産を失うことになります。不動産担保融資は滞納などの回収が難しくなったときのために不動産を担保に設定する融資ですから、滞納により不動産を失うことは当然の流れだといえます。
不動産担保融資の返済が苦しい場合やすでに滞納している場合は、早めの対処が鍵になります。
対処が遅れれば、その分だけ改善が難しくなるのです。不動産担保融資の返済で困っている場合は、早めに弁護士などに相談し、打開策を見つけることが重要になります。